免疫力を高める薬ってあるの?
投稿日:2023年2月25日
カテゴリ:院長ブログ
こんにちは。院長の谷川(総合内科専門医)です。
最近、漢方薬の「補中益気湯」(ほちゅうえっきとう)が話題になることがあります。
「補中益気湯」の「中」とは、中国語で胃などの「消化管」を指します。
「補中益気湯」とは『中(=消化管)を補い』『気(=気力)を益す』という意味で、
わかりやすく言うと『消化管機能を高め、体力をつけて元気を出す』といったイメージで、食欲不振、疲労倦怠などに用いられます。
その歴史は古く、1249年の中国で、当時戦乱が続き国民が心身ともに疲れきっていた背景の中で創られました。そしてそれが770年のときを経て、コロナ禍の現代で注目されるようになったのは免疫機能を高め、感染症の予防効果があることがわかってきたからです。
2009年新型インフルエンザが流行した年に、成人男女358人を補中益気湯の内服群と非内服群に分けて追跡した研究において、内服群は感染者1名、非内服群は感染者7名、と有意に補中益気湯の内服群で感染者が抑えられたことが報告されています。
これらは、補中益気湯がもつ免疫力を高める機能が関与していると考えられています。
また最近では、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、不眠症、うつ、男性更年期、など適応の幅を広げています。
人の体では、ヘルパーT1細胞(感染防御のための免疫誘導に働く)とヘルパーT2細胞(アレルギー反応を誘導する)が天秤のようにバランスを取りながら、感染性疾患とアレルギー疾患の両者起こりにくいように調節しています。しかし疲労やストレスなどがきっかけでバランスが崩れて、感染症やアレルギー疾患が生じやすくなってしまいます。
そうしたときに補中益気湯はこれらの免疫系をどちらにも傾かないように調整する作用があることがわかってきました。(日薬理誌.2008年)
漢方薬は万能薬や特効薬ではありません。しかし、先人たちの知恵をもとに数百年の年月をかけて見いだされた効能を、現代では安価で飲みやすい形で手に入れることができます。
「かぜの症状で受診したけど、今度はかぜをひきにくくなる漢方とかないかな?」
「仕事が立てこんで、疲れてしまって。少し元気になる薬を処方してほしい。」
などお気軽にふらっと立ち寄っていただければと思います。お待ちしております。
■ 他の記事を読む■