パーキンソン病と便秘、うつの関係について
投稿日:2023年4月30日
カテゴリ:院長ブログ
こんにちは。院長の谷川(脳神経内科専門医)です。
現在、私の外来では、多くのパーキンソン病の患者様に通院していただいております。パーキンソン病の患者様を診て思うのは、症状の出かたが人によって多様であるということです。
一般に、“パーキンソン病”は、「手がふるえる病気」、「転びやすくなる病気」などのイメージがあると思います。これらは、パーキンソン病の運動症状と言われ、ドパミンという神経伝達物質の不足によるものです。
しかし、パーキンソン病の患者様を悩ませるのは、運動症状以外の症状であることも多く、
「うつや不眠、不安感があってつらい。」
「頑固な便秘に悩まされ、緩下剤も効きにくい。」
「起立性低血圧があり、失神を繰り返してしまう。」
などがあります。
パーキンソン病の運動症状は、中脳黒質の障害によるドパミン不足が原因とされ(Trétiakoff . 1921年)、同部位にレビー小体を認めるのが特徴です。
しかし近年、レビー小体の進展は中脳黒質に発現する前に、延髄の迷走神経背側運動核に始まり、脳幹を上行して青斑核(せいはんかく)→縫線核(ほうせんかく)→中脳黒質に上行していくことが明らかになりました(Braakら. 2003年)。
迷走神経背側運動核は、内臓を動かす役割があるため、障害されれば便秘や心不全を生じます。青斑核はノルアドレナリン(=血圧や脈拍に関わる物質)を発するので、その障害により低血圧が生じると考えられます。縫線核では、セロトニン(=情動の安定化や睡眠覚醒のリズムに関わる物質)を発するので、その障害により、うつや不眠症などを生じます。
このようにパーキンソン病は、体の動きの症状以外にも、様々な症状があり、うつや不眠などの精神症状が目立つ人、便秘や低血圧などの自律神経症状が目立つ人、すべての症状が出てしまう人、など多様です。
上記のパーキンソン病の進行様式や多様性を鑑み、私の外来では一人一人の病期にあった薬物治療やリハビリをご提案させていただきます。
「この症状はご専門じゃないかも知れませんが・・」と言われることがありますが、お困りの症状をすべてお伝えいただけることが、実は本質的な診断と治療に結びつくことが多いです。
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