「両肩、両ふとももが突然痛い」本当に歳のせい? ~「リウマチ性多発筋痛症」を見落とさないポイント~
投稿日:2023年5月22日
カテゴリ:院長ブログ
こんにちは。院長の谷川(総合内科専門医)です。
今回は「リウマチ性多発筋痛症」について。
私の外来で、
「突然、両肩の痛みで腕が上がらなくなって。歳のせいと言われました」
「両ふとももの痛みがあって、起き上がるのが大変になりました。」
ということで受診される中高年の方(50歳以上)がいらっしゃいます。
「歳のせい」、と考えられてしまい、受診しても湿布薬などで様子見となることがあります。結果、つらい症状が持続し、数か月たってから当院を受診されることも多いです。
ポイントは、
・「体幹に近いところ(肩・上腕・大腿など)」の痛み
・「両側」の痛み
・50歳以上の「中高年」
などが挙げられます。
「リウマチ性多発筋痛症」と診断し、ステロイド少量を数日内服することで著明に改善します。
「リウマチ」と名前がつきますが、リウマチとは異なる病気で、採血をしてもリウマチ因子は陰性で、筋炎とも異なるため筋肉の酵素(CK)も上昇しません。
治療に反応する、といった意味で良性疾患でありますが、痛みやこわばりといった症状が強いため、治療されないと生活の質が大きく低下します。
また、10%くらいに「側頭動脈炎」と言ってこめかみのあたりにある血管の炎症を合併し視力に影響することがあり、特徴的な「側頭動脈の怒張」を初期から見逃さないことが大切です。
そしてステロイドで治療してもなかなか改善しない症例のなかには、全身の悪性腫瘍にともなって発症する=「傍腫瘍性症候群(ぼうしゅようせいしょうこうぐん)」が(頻度は少ないですが)含まれることがあり、全身的な検査(CTなど)が必要になることがあります。
したがって上記のポイントで挙げたような症状があり、リウマチ性多発筋痛症が疑われるときは、少量ステロイド投与とともに、合併症の有無についても総合的にみていく必要があるためお早目の当院受診をしていただければと思います。
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